Kindle出版で漫画を出すのはおすすめできません

写真や図やイラストで本を出すことはおすすめできない。

そんな話をしたので、
おそらくは、本項でお話しする内容についても
漠然とイメージができているのではないでしょうか。

その通り。
漫画を描くこともまた、
電子書籍出版においてはあまり合理的なアプローチといえません。

もちろん、あなたが漫画家であるならば、
先の維持費の問題さえクリアすれば、ぜんぜん問題ないとは思います。
実際、普通の電子書籍よりも、
漫画の方がケタ違いに売れますからね。
私も、自分が原作をプロデュースする形で、
試験的にいくつかの漫画を作成し販売していますが、
売り上げの大半がこれだったりもします。

しかし、繰り返しになりますが、
あなたが漫画家でもない限りは、
漫画を描くこともまた悪手になりえます。

「自分が儲けているから独占したいんだな」

などと、思われてしまうと不本意なので、
取り組んでいるということを例に出そうかは迷ったのですが。

まぁ、隠して独占するつもりなら、
こうして話題にすることもないだろうということで、
その点はご理解いただきたいのですが。

では、なぜ、漫画を描くことはおすすめできないのか。
先のランニングコストの問題については、ここでは省略しますが。

実は、制作費がバカにならないのと、
完成する保証がないという、ダブルのリスクが発生しうるからです。

まず、原稿の作成費ですが、
モノクロでも、1ページあたり5000円程度からとなっています。
もちろんこれは、アマチュアの同人作家とされるような
漫画家のタマゴの人たちにお願いした場合の金額です。
カラーになると手間はそれほど変わらないと聞いていますが、
8000円程度からが相場となっております。

したがって16~20ページ程度の短編を1本仕上げるだけでも、
制作費だけで10万円以上のコストが発生するのです。

もちろん、漫画はよく売れますので、
ネタが秀逸で、金額設定さえ間違えなければ問題なく回収できます。

しかし、全くの初心者が、それだけの事業投資をして、
なおかつ確実に回収に至るようなネタやコンセプトをの企画をすることができるでしょうか。
そして、売り上げを最大化するような金額を読み切ることができるでしょうか。

あと、これは私自身がよく経験する失敗で、
それゆえにおすすめしない理由にもなっているのですが。

やはり、アマチュアの漫画家ということで、
彼らはプロではない、プロになれない何らかの理由を持っていることが多いのです。

最たる例は制作スピードがすこぶる遅い、ということですね。

あなたもご存じだと思いますが、
やはりプロの漫画家になるには、連載仕事をこなす必要があるので、
安定したクオリティで、スピーディーな制作が求められます。

ただ、アマチュアの漫画家は、その点で著しく劣る人が多いのです。

もっとも、制作スピードが遅い理由は、
どちらかというと技能的な問題ではなく、
自身の制作へのこだわりが影響していることが多いのです。

たとえば、背景の書き込みを事細かにやりたがったり、
コマ割りを何パターンも作ってしっくりくる形をあれこれ試したり。
締め切りに追われない生活に慣れすぎたせいなのか、
重視するポイントがズレているというか、
結果の違いを生まない部分にさえも、クオリティへの妙なこだわりが多いのです。

他にも、アーティスト気取りで、
こちらの意向をくんでくれなかったり、
あえて反発することでプロらしさを主張しようとしたり。

さらには、手直しを依頼すると
自分の仕事を冒涜されたと怒り出すような人もいたり。

なかなか、気むずかしい人も多いので、
編集エージェントなどを挟むなどしないと、
うまくハンドリングできない場合もあります。

ただ、それだと、先の原稿料が倍以上になりますからね。
果たして、それだけの価値のあるアマチュアがいるかどうか、というと
微妙なところだと思います。

なお、プロに依頼する場合は、
先の目安の5倍程度になると覚えておきましょう。

ただ、コストこそ掛かりますが、
仕事のクオリティはバツグンですし、とにかく早いです。

しかし、その一方で、
出版社との契約で外部の仕事を請け負うことができない場合などが多々あります。

集英社の契約の話は有名ですが、
最近では他の出版社でも電子書籍での活動を警戒して
外部仕事の制限をしているケースもあると耳にします。

それと作画の部分をプロの漫画家に担ってもらったとしても
クレジットを拒否される場合があります。
要するに、誰が描いたかをこちらで公表することができない、ということです。

プロに依頼するメリットは、
その技量、スピードもさることながら、
その漫画家の固定ファンをもターゲットにできるところのあるわけですが。

そのあたりのもくろみが外れると、
制作費の回収が一気に難しくなってきます。

このあたりは、契約書で明記しておかないと、
支払後に拒否されるリスクもありますので注意しておきたいところです。

なお、私も、漫画家ではありませんが、
あるクリエイターに制作物を依頼した際に、
ネームバリュー込みで相場の実に5倍近い法外な制作費を支払ったのですが、
納品後にクレジットを拒否されたことがあります。

非常に親しい友人の紹介で、
それ以前からも5年来の顔見知りだったこともあり安心しきっていましたが、
自分の甘さ、未熟さを痛感させられました。

ともあれ、日本人の場合は特に、
欧米のような訴訟社会というわけではないので、
契約書を交わすこと自体が相手に対して失礼と考えてしまう人が多いようで。

ほら、契約書って訴訟になった時の材料みたいなものですからね。
それゆえに、口約束のなあなあで話を進めて、
先々にトラブルが発生することが多いようです。

しかしながら、ビジネスで取り組む以上は、
相手に対する配慮よりも、
自分の利益をしっかりと確保すること、損をしないこと、
そちらを優先する姿勢を持つべきです。

どれだけ親しい友人との仕事であったとしても、
契約書を交わすくらいの慎重さは持っていないといけないと思います。

さて、話を戻しますが・・・。

いずれにせよ、正規の契約書を作成するにも、
司法書士に作成を依頼する必要があります。

最近は、相場がだいぶ下がってきていて、
2万円程度で応じてくれる司法書士も多いのですが。
それにしても、これまた余計なコストになることには変わりありません。

そして、ラストですが。

あなたが企画者で、原作を行ったとしても。
すなわち、作画しか行っていない作品であったとしても、
漫画家はそれを自分の作品だと考える傾向にあります。

とりわけ、連載経験などを持たない、
ビジネス感覚に乏しいアマチュアほど、その傾向は顕著です。

それゆえに、原稿完成後に使用権を要求してきたりすることも少なくありません。
それに応じれば、
「内輪だけに限定します」などといいながら、
ソーシャルメディアを通じて転載され、
結果的にネット上で無料公開されているのと同じ状況になりがちです。

また、それに応じなければ
「自分の作品なのに許せない!」などと怒り出して、
これまたばれないようにと、
コッソリと無断で公開するなど。
いずれにせよ、原稿完成後のトラブルのタネは尽きません。

あと、あなたが発注した作品が売れると、
勝手にシリーズものを出したり、続編を出したり、
さらには同人誌にしたりグッズを作ったり。
そのあたりの感覚がズレている人もいます。

ストーリーを作ったのはあなたでも、キャラクターを作ったのは自分。
だからそのキャラクターを使って自分が何をしようが自分の自由、
そんな理屈で目先のお金見目がくらむのでしょう。

というわけで、一見、
クラウドソーシング的な仕事のモデルケースとして考えられがちな
アマチュア漫画家の起用ですが。
その実態としては、かなりハンドリングが難しく、高コスト体質な事業になりがちです。

したがって、たしかに通常の文字だけの本と比較して、
高い印税収入は魅力的といえるかもしれませんが。
あくまで電子書籍は、収益を得るための事業というよりは、
権威性を演出するための道具として利用した方がうまみが大きいので、
漫画を描くこともあまりおすすめできません。

なお、漫画家というリソースを別の方向で活用するというアイデアもあると思います。
たとえば、書籍のカバーデザインなどです。
事実、私も、プロの漫画家にカバーのデザインをしていただいていた時期もあります。

ただ、正直、お勧めする手法ではありません。

確かに、イラストのクオリティは高く、インパクトも大きいのですが。
デザインがやかましすぎて、タイトルがまったく目に入らないことが多いのです。

ウェブデザイナーによるカバーデザインと比較すると、
インターネット上での見栄えがそれほど良くはないのです。
やはり、電子書籍のカバーというのは、
ウェブデザインにカテゴライズされる業務なのです。

もちろん、私の著書のカバーデザインをしてくれた漫画家の名誉のためにいっておきますと、
デザイン案を考えたのも、OKを出したのも私です。
彼の仕事に落ち度があった、というわけではありません。

ただ、やはりどういった目的で作られたカバーなのかを知っている人間が、
単体で仕上がってきた作品をチェックすると、
このように全体で並べたときに案外・・・というのはよくある話なのです。

それと、やはり漫画家は、
自分のイラストを大事にしたがる傾向があります。
イラストにタイトルをかぶせてしまうようなクリエイティブを意識的に避ける傾向にあります。
だからこそ、いわゆる本のカバーらしいデザインにならないのです。
どことなく、ポスター的なクリエイティブになりがちなのです。

ともあれ、そういったクリエイティブのカバーになってしまうと、
いかにも電子書籍、という感が出すぎてしまいます。
権威性を演出するには、
やはり「紙の本もありそう」に見えるクリエイティブであることの方が良く、ですね。
そういった意味でも紙の本ではなさそうなカバーデザインというのはマイナスなのです。

ちょっとカバーの話にズレてしまいましたが。

いずれにせよ、優秀な漫画家とタッグを組むのは容易なことではありませんし、
幸運にもそんな機会に恵まれたとしても、先々の問題は山積みであることが多いのです。

だからこそ、ムダにタスクがかさむような業態で本を作成するのではなく・・・
すなわち漫画という手段を検討するのではなく、
シンプルに、文字だけの本にとどめるのが良いということです。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です