本を書くときは数字を盛り込むのは可能な限りやめましょう

一般的に、数字を盛り込んだ文章は、論理的で説得力があるといわれています。

たしかにその通りで、
セールスに際してのコピーライティングでも、
そのセオリーを踏襲した表現を行うことは少なくありません。

しかし、電子書籍においては、マイナスに作用することが多いので、
ルールとして禁じておくことを推奨します。

どういうことかというと、
数字を盛り込むことで、
時間が経つとアップデートや内容の差し替えの必要が出てきたり、
それゆえに内容が古いと思われたり、いろいろと都合が悪くなってくるのです。

たとえば、私が自身の著書でボツにしたこの表記。

現在、男性の生涯未婚率は20%程度となっており、実に5人に1人は結婚をしないまま人生を過ごします。

ここに書かれている数字は、
「日本国勢図絵(公益財団法人・矢野恒太記念会発行)」に掲載されている
国勢調査を踏まえた2010年時点でのデータなのですが。

その後、5年後の、
2015年度のデータが掲載された日本国勢図絵の最新版では、
その数字が大きく変動していました。

2010年 20.14%

2015年 23.37%

実に3%以上も上昇しているのです。
もちろん、四捨五入をすれば、まだ20%程度という表現ができるわけですが。

その前の2005年の調査では15.96%だったことを考えると、
2020年には25%を越えてくることは想像に難くありませんよね。

したがって、先のような表記を盛り込むことは、あまり合理的とはいえないのです。

現在、男性の生涯未婚率は20%程度となっており、実に5人に1人は結婚をしないまま人生を過ごします。

どうしても、この要素を盛り込みたいのであれば、
こういった表現にする必要があるのです。

現在、男性の生涯未婚率は上昇傾向にあり、かなり多くの男性が結婚をしないまま人生を過ごします。

トレンド的に20%を下回るような回復を見せることは考えづらいのですが・・・。

ともあれ少子高齢化で高齢者がゴッソリと亡くなったタイミングで
回復する可能性もゼロではないですからね。
ゆえに、どちらも定性的な表現にしておくのが無難なのです。

あと、実を言うと、
あまりに数字を盛り込んだ文章、定量的な情報をふんだんに盛り込んだ文章は、
論理的で説得力があるというよりは、
説明的で読みづらいと思われることが多いのが実態です。

まじめ一辺倒に、
「定量的な数字を盛り込んだ方が論理的でわかりやすい文章になる!」と信じ込んだ人が、
その手の読みづらい文章を書くことが多いのですが。

世間で思われているほど、その手の文章はわかりやすいものではありません。

たとえばこの情報、読みやすくてわかりやすいですか。

2016年の推計人口で、前年度よりも人口が増加したのは7都県で、東京が最大の0.8%、次いで沖縄が0.4%、他埼玉と愛知が0.3%、神奈川と千葉が0.2%、福岡が0.06%の微増となっています。

悪い例だからといって、
露骨にわかりづらくするのもアンフェアだと思ったので、
意図的に読みやすくまとめてみました。

しかしそれでも、絶望的なほどではないですが、
おそらく言葉にして読み上げられたとしたら、
何を話しているか、情報を整理できない人がほとんどだと思います。

そして、電子書籍は基本的に流し読みされるものですからね。

すなわち、こういった定量的な数字、データの羅列は、
それこそインターネット上のバナー広告のごとく、
存在を無視される構成要素になるのは目に見えています。

ゆえに、
「定量的な数字を盛り込んだ方が論理的でわかりやすい文章になる」というのは、
世間で思われているほどの情報伝達効果はないのです。

しかし、要点をまとめた表記にしたらどうでしょうか。

2016年の調査で昨年よりも人口が増えていたのは、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県。地方では愛知、福岡、沖縄の3県。合計7都県ですが、いずれも大幅な増加があったわけではありません。

文章量自体は大して短くなってはいませんが、
それでもわかりやすさは段違いだと思います。

これまで、何度もお話ししてきましたが、
あくまで電子書籍は「意見」を伝える目的で書かれているのです。
そこに、厳密で、事細かな裏付けとなるデータは不要です。

もっと、感覚的に、誤解を恐れずにいえば、
ある種の適当さをもって伝えるべきなのです。
そういった意味で、定量的な数値を用いた表現は、
電子書籍のあるべき形の対極にあるものといえますし、
作業工程を複雑化させるという点からも、盛り込むべき要素ではないことは明白です。

実際、私も本項の例を書くだけで、ずいぶんと労力を使わされました。
しかしながら、その労力に見合った何かが、
先の定量的な表現の部分によってもたらされたかというと、
正直微妙だというのが実際のところです。

というわけで、一般的には、
論理的な文章を書くためのセオリーといわれている
定量的なデータを盛り込むという手法ですが。

実際は、無駄骨になるだけなので、
禁じ手としてルール設定しておくべき悪手であると覚えておきましょう。

あと、そもそもの話をすると、
電子書籍は縦書きに編集するのがセオリーです。
その際に、あまりにケタの多い数字がズラリと並ぶと、
読みづらさが尋常ではないのです。

そういった、電子書籍のインターフェース上の問題、課題も踏まえ、
やはり数字を盛り込んだ文章は控えるに越したことはないでしょう。

もちろん私も、自身の著書では、
まったくといっていいほど、データの類を引き合いに出して、数字を羅列することはありません。

その数字の羅列は、著者は見慣れたものかもしれませんが
読者さんにとっては、ストレスのたまる、
整理しづらい、わかりづらい情報であることが大半だからです。

理論を盲信していると失敗するという典型ですので、くれぐれもご注意ください。

【補足】

そもそもの話なのですが。

「コピーライティングには数字を盛り込め!」というのは、
誤訳なのではないかと思っています。

characterを、
本来は人柄とか、ステイタスと訳すべきところを
「数字」と訳してしまって
それが広がっている・・・みたいな。

事実、コピーライティングに関する名著の多くは、
広告はセールスマンシップである、と主張しています。

すなわち、印刷された営業マンであり、
情報の受け手との関係を築き上げるものでなければならない、と。

その定義から考えると、
人柄や、ステイタスと訳す方が適切、
そして誤訳だったのでは?という説の方がしっくりくる気がします。




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